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■『エネフレンド』2001年5月1日号
 = CSの時代=

 「入居者はお客様」との発想のもと、
 サービスアップに努める横浜市の介護福祉施設。
  ▼記事詳細

■『シルバー新報』2001年2月9日号
 =シリーズ現場からの提言=

 「利用者はお客様」サービス業の発想で施設運営
  ▼記事詳細

 

■『エネフレンド』2001年5月1日号
 = CSの時代=
 
「入居者はお客様」との発想のもと、サービスアップに努める横浜市の介護福祉施設。

 充実した施設とていねいな応対で注目を集める
 横浜市栄区の閑静な高台の一角に、地下1階・地上3階建ての真新しい施設が広がっている。昨年4月にオープンした特別 養護老人ホーム「クロスハート栄・横浜」である。

 ここは痴呆症や障害を抱える高齢者を受け入れる施設。いわば最も困難な介護の最前線といえる場所だが、館内は清潔で明るく、重苦しい空気は一切ない。入居者の部屋もゆったりとしたつくり。理容室やフットケアの設備まで用意されている。

 そんな設備面の充実ぶりからも入居者への心配りが感じられるが、同ホームの姿勢がよく表れているのは、入居者に対するスタッフの姿勢だろう。靴が脱げかけた入居者への対応を例にとると、“○○さま、お靴が脱げかけていますので、直させていただいてよろしいですか?”といった具合。こうした接遇応対について片山施設長は当然のことと語る。

「入居者の方々は人生の大先輩ですし、老人ホームも一種のサービス業である以上、お客様である入居者に対し、ていねいな呼びかけをするのは当たり前ですよね。うちの応対ぶりが注目されるのは、むしろ従来の福祉業界にそうした意識が足りなかったからだと思います」

 昨年4月の介護保険スタートのより、利用者が施設や事業者を選べるようになり、福祉業界も新たな段階を迎えた。施設数がまだ少ないことから、実際には自由な選択が可能なところまで至っていないが、近く競合時代の到来が予想される。そんな中、いち早くサービス重視の方針を打ち出した同ホームに注目が集まっている。

 ちなみに、サービスを充実させるために、あえて2万円の保険対象外の負担金を設定しているが、それでも入居者数は定員の120名に到達。開設から1年ながら、現在、入居待ちは420名にも上っているという。

 “終の住処(ついのすみか)”をよりよいものにするサービスのしくみ
 さて、そんな同ホームの運営コンセプトは、“楽しく、きれいに、いつまでも”というもの。“楽しく”は、入居者に気晴らしを提供すること。“きれいに”は入居者の身のまわりや環境、スタッフの服装などを清潔に保つこと。そして“いつまでも”は入居者自身がずっと滞在したいと思える環境づくりだという。

「うちの入居者の方々の平均年齢は84歳で、ここが終の住処となるケースが多いんですね。そこで、心穏やかに人生の終末期を過ごしてもらえる場づくりを目指し、運営コンセプトとしているんです」

 そして、これらのコンセプトを実現していく上で柱となっているのが、サービス品質管理のしくみである。以下にポイントとなる取り組みについてご紹介しよう。

●業務マニュアルの整備
 開設時から始めた取り組みで、入居者へのケアや環境整備、リスク対応等をまとめたマニュアルを11種類作成。安全面 やサービスの基本的な遵守事項が明示されており、日々の業務を通じて得たアイデアやノウハウが改訂時に追加される。バラつきのない安定的なサービス体制づくりが目的。
●ケアノートの作成
 スタッフが介護状況を記録したり、付添いの家族がメッセージを書き込む「ケアノート」が館内の定位 置に置かれている。これは、入居者一人つき一冊が用意されており、各スタッフに全入居者のノートに毎日目を通 すことを義務づけている。サービス活動を記録し、スタッフ間で検証、共有化するのが狙い。
●ISOの認証取得
 今年2月、東日本の特養施設としては初めて国際標準化機構の品質管理規格・ISO9001の認証を取得。福祉サービスは形がなく、重度の痴呆患者者などを対象にする場合、どの程度のメリットにつながるかを実証するのが難しいため、入居者のご家族の方などにサービス水準を認知してもらい、安心してもらうことを目的に取得したという。前途のマニュアル整備やケアノート作成も認証取得に関連しており、今後はISOの指標を実行し、チェックしていくことで、サービスアップにつなげていく予定とのこと。

  働きやすい環境づくりに向け細やかな心配りも
 さらにもう1点、同ホームのスタッフ体制にもふれておこう。約110名のスタッフの平均年齢は32歳。やや若い気がするが、それもそのはず、 「ほぼ全員が介護業務の未経験者ぞろいです。キャリアよりも、人間性や情熱、入居者を楽しませることができる特技を持っていることなどを重視して採用した結果 です」

 面白いのが、こうした採用方法によって、美容師やマッサージ師、声楽家などの専門的な技能をもつスタッフが加わっている点だ。彼らの特技は前途の理容室をはじめ、さまざまな催しやリハビリ・プログラムなどにも生かされ、サービスの幅を広げるのに役立っている。

 また、スタッフが働きやすい環境づくりも進んでいる。たとえば、洗濯や清掃などの業務は業者に委託しているが、これは衛生面 を一定のレベルい保ちつつ、スタッフの負担を減らすためだという。

「こうした業務は、他の福祉施設ではボランティアに頼ることが多いのですが、うちはサービス品質を維持するためにボランティアの職員は受入れていません。でも、正規のスタッフにやらせると、ケア業務に支障が出ます。そのため、外部の業者さんに委託しているんです」

 他にも無理のない勤務ローテーションや介助機器の導入などで負担減を図るなど、きめ細かい目配りが。

 そうしたバックアップ体制もあってか、スタッフの表情は穏やかで明るい。入居者への対応もていねいなだけでなく、優しくて親切。しかも、本人もイキイキと楽しそうだ。

 片山施設長は、顔をほころばせる。「経験が足りない分、技術面 での課題はまだまだありますが、みんな素直でやさしくて、まっすぐなタイプばかり。入居者にとってよりよいサービスを提供しようと一生懸命です。親バカみたいですけど、うちのスタッフは日本一だと思いますね(笑)」

 そして、こうしたスタッフのモチベーションの維持にも、CS取り組みが役立っているのだという。

「入居者を大事にする施設で働いていることが、プライドになっている面 がありますね。そして、それが意欲につながっていると思います。今後も彼らの情熱をキープしながら、技術面 を高めたいと考えています」

 質の高いサービス提供に向けて施設運営を考え、着実に基盤整備を進める同ホームのCS取り組み事例。高齢者介護の現場の状況がうかがえるとともに、サービス提供のしくみづくり、それを支える運営面 での配慮など、参考となる点は多そうだ。


 

 

■『シルバー新報』2001年2月9日号
 =シリーズ現場からの提言=
 「利用者はお客様」サービス業の発想で施設運営

「入居者はお客様」とサービス業に徹底した特別 養護老人ホームの運営に取り組んでいるのが、「クロスハート栄・横浜」(社会福祉法人伸こう会)だ。2万円の保険外負担はサービスの充実への自信でもある。民間の高齢者住宅のベテラン経営者が蓄積したノウハウを活かした「利用者第一」の施設運営に従来型の事業者も学ぶべき点が多いだろう。

特別老人ホーム クロスハート栄・横浜
 「クロスハート栄・横浜」は、高台の住宅地の一角にある100床の特別 養護老人ホームだ。介護保険導入後の昨年4月にオープンしたばかりだ。老人ホームではまだ珍しいISOの認証もこの二月に早速取得した。

 新しい施設内は、落ち着いたインテリアで老人ホームによくある折り紙などの親しみやすくはあるがどこか子供じみた飾り付けがない。入居者は「様」づけだ。品のいいユニフォームに、普段着に着替えた入居者。スタッフの動きもゆったりしてみえる「大人の空間」は、ホテルや欧米の老人ホームを連想させる雰囲気だ。

「うちのスタッフはとにかくやさしい。それが自慢できること」と目を細めるのは片山聖子施設長。施設長自ら30代前半。若いスタッフ中心の運営だ。

 サービス業に徹するために職員の採用にはこだわった。採用条件は「やさしいこと・特技があること・敬語が使えること」の3点。介護の経験よりも人間性や利用者を楽しませることができる素質を重視した。結果 として常勤スタッフ50人ほどの7割が男性。音楽担当、美容師、フットケア、マッサージなど「異色」の専門家も常勤で働いている。痴呆の高齢者を中心に受け入れることからも音楽にはこだわった。音楽療法を学んできた人など常勤二人、非常勤一名の体制だ。

「プロとして食べていくのは難しい。老人ホームも音楽を続けていく一つの道だと考えている」音楽スタッフの一人である堀部さんは、プロの実力をもつ声楽家だ。本格的な歌声が響くと痴呆のあるお年寄りも耳を傾けるという。人を楽しませる、喜んでもらうのが好きという性分が介護の仕事に向いていたのだろう、自らかって出てグループケアのリーダーでもある。堀部さんをはじめ、さまざまな経歴の若い男性がいきいきと働いている姿に驚かされる。

 住宅街の中にあって、ボランティアをしたいというニーズも強くあったが、サービスのクオリティを考えて、当面 はボランティアを受け入れない代わりに、週に1時間でも働くことができる登録制のパートとして働いてもらっている。その数は120人だ。質・量 ともに従来の社会福祉法人にはない大胆な発想だ。

 社会福祉法人の母体となったのは、県内に14カ所の高齢者住宅を経営する同名の株式会社だ。独身寮を改修して再利用する高齢者住宅は今では珍しくないがその草分け的存在として有名だ。

 陣頭指揮をとってきた片山ます江社長は社会福祉法人の副理事と現場からは一歩ひいたかたちだが、草創期からのベテランスタッフ8名ほどが社会福祉法人に移り、グラニー方式の核を支えている。

 サービスの基本理念は、「きれいに、楽しく、いつまでも」。シンプルでわかりやすい。

「以前は営業に走り回ったが、今はお客様のほうから来ていただける。運営の中身だけに集中できるのが面 白い」(片山施設長)

 しかし、「文化」の違いも感じた。専門スタッフによる特別 なサービスの対価として2万円を保険外負担してもらっているが、それを「高い」という家族もいる。現在の待機者は400人。施設不足で、選ぶところまでいかないのが現状だからだ。

 しかし、実際に見学に来て、ぜひと申し込んだ人も150人。こんな施設に入居したい、させたいというニーズに手応えもある。規則もなく家族も訪問しやすいのか、毎日面 会に来る人も少なくないという。

「若い人が一生懸命やっているということで、ご利用者や家族の点が甘くなっていると思う。まだプロとしても介護ではない」

  はじまった新しい時代の施設づくり
 課題はスキルアップと片山施設長は控えめだ。入居者の要介護度は、平均4.3。平均年齢は84.5歳。9割の人に痴呆があり、高齢者住宅の時よりも重度にシフトしており、より介護のプロとしての専門性が求められている。痴呆の高齢者のためのよりよいケアを目指し、さらにターミナルケアも行いたいと目標は高い。

 介護保険は、今のところ施設サービスの一人勝ちだ。当初はあった「選ばれる施設」へ脱皮しなければ、生き残れないという危機感も一時期より薄れかかってきたようにみえるが、さらに先の時代を見据えた新しい施設づくりも着実に始まっている。


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